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インスタグラム mare.wine が綴るワインと時々経済のはなし

2019年の締めくくりとして、今年のワインTOP5 - ランキング 1 / The most memorable TOP 5 wines in 2019 - Ranking 1

今年も暮れが近づいてきました。明日はもうクリスマスイヴ。皆さんがホリデームードになる前に、今年の1位を発表したいと思います。

 

1位はダグノー・シレックス2000年です!!!

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このワインを選んだ理由は単純にこのワインが美味しかったからというだけではないのですが、それはともあれこのワインが本当に素晴らしかったことに変わりはありません。シレックスの凝縮したミネラル分をこれまた集中度の高い果実が受け止め、19年の歳月がこの要素を完全に「融合」させていると感じました。この融合というのは赤ワインでも白ワインでも起こるものですが、この現象はデカンタージュとかその他のユーティリティーによってもどうにもならないものと思っています。

 

例えば、造りたての一見調和した庭園があったとします。素晴らしいデザインであったとしても、最初はどうしても「違和感」を感じます。草木がお互いに馴染み合うには「自然の力」を借りなければなりませんし、そのためには時間が必要です。ワインも同じかなと思っています。去年ランキング1位にさせて頂いたクリサワブラン。若くても美味しいワインですが、若い時には面白いことに一つ一つの構成要素の特徴が飲んでいる時間の経過とともに顔を出してきます。それはそれで楽しいのですが、以前寝かせたクリサワブランを飲ませて頂いた時の印象は、混醸された品種が完全に溶け合い、絶妙なバランスと非常に長い余韻を持つ凄いワインでした。飲んでいる途中で転調とかすることなく、一貫して同じ美しい旋律を奏でるイメージでした。

 

やや脱線しましたが、ダグノーのシレックスを飲んだ時、一緒にヴォドピーヴェッツのソーロ2004年を開けていました。このソーロも凝縮したミネラル分を持っているのですが、こちらの方も凄いポテンシャルを感じるものの、その凄みを発揮するのはもう少し先という印象でした。どちらかというと一緒に飲んだノーマルのヴィトフスカ2004年の方が機が熟している感じでした。

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本当に勉強させられた比較テイスティングであり、タイミングが本当に大事なんだなと再認識したイベントでした。そして、ワインを飲めば飲むほどワインのポテンシャルに目が行き、その将来的価値を現在価値に引き直した評価を自分がよくしてしまっていることにも気付きました。これはとても重要な気付きで、プロがそのワインを大きな成長ポテンシャルがあってどのくらい素晴らしいワインであるかを評価していても、特に一般の方には「その時のその味」が全て。一期一会なんですよね。「ポテンシャルのある凄いワインなんですよ!」なんて言ってないで、本当にその時が美味しいワインをお客様に提供できるように、そしてワインがその生涯を十二分にまっとうできるように、心がけて行きたいと思った経験でした。

 

そんなこんなで1位となりました。皆様、メリークリスマス&良いお年を!

 

mare

 

 

 

 

2019年の締めくくりとして、今年のワインTOP5 - ランキング 2 / The most memorable TOP 5 wines in 2019 - Ranking 2

2019年のランキング2位は、オキピンティ/グロッテ・アルテ2006年です。

 

このワインは月次のワイン会で出したワインですが、開けた瞬間から「特別」なのが分かりました。素晴らしい熟成したバローロ のような威厳さを感じたからです。オキピンティはシチリアの女性醸造家ですが、彼女がワインを造り始めた当初からフォローしています。このワインが自然派だからという訳ではなく(当時はあまり自然派っぽい自然派は好きではなかったですし)、その時代にシチリアワインとして主流であった過熟的なワイン、例えばドンナ・フッガータやプラネタなどと違ってシチリアワインらしからぬ酸と透明感を持っていたからです。

 

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前から申し上げているように、私昔からアマチュア・カヴィストでございます。なので趣味はワインを美味しく育てる事。そして育てようと思うワインの条件は、1.いっぱい買える値段である事、2.ワインが十分な酸を含んでいて他の要素とのバランスが良い事、3.今より寝かせることによって複雑味が増すポテンシャルがあること(ここだけ説明しづらい)、です。プロのカヴィストを名乗るようになってもこの条件は何ら変わりません。なので育てるワインの対象として、DRCは含みませんし(熟成させて一番面白いのはDRCということも承知です)、酸が弱くてフレッシュなワインはセラーには置きません。

 

こんな条件から購入して以来、育ててきたこのグロッテ・アルテ。もともと酸が十分ある上にシチリアらしい果実味も備えていました。そこに熟成に耐えるだけの酒質、しなやかさもあり、セラーの中で美しく育っていました。透明感のあるワインが過度な重さを感じさせない、でも複雑なワインになっていたんです。ワイン会の時には他にマーカッシンやセシル・トランブレの特級畑やドーヴネのワインなどもあり、それらと比較されるとどんな反応になるのか心配もありましたが、やはり美味しいものは美味しいと皆さんに公平に評価されるんだなとこの時実感しました。皆さんがこのワインを飲んだ後の「沈黙」。

 

育ての親として本当に嬉しかったです。

 

mare

2019年の締めくくりとして、今年のワインTOP5 - ランキング 3 / The most memorable TOP 5 wines in 2019 - Ranking 3

今年もやっぱりナカザワヴィンヤード!

 

今年は2月にサラリーマンを辞め(いわゆる「脱サラ」)、ワインダイニングへの道途中として多くのワイン会を企画させて頂きました。そこでワイン好きの方々の嗜好や思考を勉強させてもらったり、そして優に100本を超える素晴らしいワインを開ける機会を頂き、その味、成長を確認できたり、本当に密度の濃い時間を過ごさせて頂きました。懲りずにワイン会に来て頂いた方々に本当に感謝の一年でした。

 

そんな一年の中で世間一般にいう貴重なワインを色々開けさせて頂いて、本来ワインに優劣をつけるものではないながらも、夏頃までにはワイン会でのワインを中心に自分の「今年一」みたいなリストが出来上がっていたんですが、、、、、9月に壊れました(汗)

 

とあるインポーターの方々と北海道の生産者さんを回る機会があり、ナカザワヴィンヤードさんにお邪魔する機会がありました。そこでクリサワルージュを飲んで、、、おかわりして、またおかわりして、、、

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このワインに思うことは「毎日飲みたいワイン」(いやいや、手に入らないので現実的な話ではないのですが、、、)。もっというと空知のワイン全体にそれを感じています。近藤さんご兄弟のワインにしても、イレンカさんにしても、手に入る入らないは別として、素晴らしいワインであり、毎日飲みたいワイン。シャトーマルゴーも、モンラッシェも、カーゼバッセも凄いワインであり、素晴らしいワインですが、自分がお金持ちだったとしても毎日飲みたいとは思わないです。空知のワインは毎日飲みたい!何でしょう、身体への浸透率が高いというか、ゆっくりずっと飲んでいられる。空知の方々は各々の個性がありますが、ご自分たちの飲みたいワインを苦労しながらも愚直に造っておられるという印象があって、それがこの共通点を作っているのかなと感じます。すばらしいクオリティーが備わっていて、さらに毎日でも飲みたくなる。それって最高のワイン像じゃないかなと去年の暮れにぼやっと考えていたことを再認識させられました。

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そして今年自分が最も気になっている疑問がこの訪問とそれに先駆けて一月前の南アフリカ旅行での体験で湧いてきました。空知の寒い土地ではブドウの糖度を上げていくために、時期的に台風などのリスクに対峙してでも、収穫を我慢強く待つのに対して、南アフリカで全ての生産者が口を揃えたのは「アーリーピッキング」。つまり南アフリカでは酸を確保し、ワインのエレガントさを残すために早めの収穫を心がけているようです。では、空知と南アフリカで同じ糖度のブドウから同じpHのワインができたなら、そこに何が残るのだろうという疑問です。自分なりの見解では南アフリカのワインには、良く言えば「血統の良さ」、悪く言えば「ボンボンな感じ」な印象があります。空知のワインには「覚悟」が見える気がします。

 

本当に自分がワインのテイスターとしてそこまでワインの「向こう側」が見えているかどうか怪しいものですが、そんなワインの本質的なところも見えるような「ワイン飲み」になれればと切望する今日この頃です。

 

mare

 

2019年の締めくくりとして、今年のワインTOP5 - ランキング 4 / The most memorable TOP 5 wines in 2019 - Ranking 4

レストランの工事が始まっていつ忙しくなるか分からないので、本日2投稿目行ってしまいます。

 

今年のナンバー4は、ドメーヌ・フーリエ、ジュヴレイ・シャンベルタン・クロ・サン・ジャック2007年マグナムボトルです。

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私、フーリエ好きで知られていますが、特にクロサンジャックが好きです。フーリエはそもそも造りが個性的で官能的な雰囲気が強いので、果実感が強くややフェミニンにもなりがちなグリオット・シャンベルタンはときどきあまりに「いやらしい」感じになります。球体を超えて、だらしなくなると言うか、、、、、 その点CSJ(クロサンジャックのこと)はそもそもが強さ、たくましさを兼ね備えているテロワールなので、フーリエの甘美的な造りによって、しなやかで強靭な女性の姿を思わせるようなワインになります。画家の藤田嗣治がときどき非常に筋肉質の裸婦の絵を描いていましたがそんな印象です。

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まずワインを開けた時の香りがとても印象的。熟成したフーリエは徐々にこの香りが減退していきますが、そこはマグナムボトル!甘美な香り(個人的にフーリエ香と呼んでいるもの)が漂います。そして、このボトルは本当に状態も良く、シルキーでシームレスなテキスチャーの上に、ラズベリー、チェリー、クランベリーなどの赤い果実が溢れんばかり。個人的に昔から2007年のCSJがとても好きなワインでしたが、このボトルを飲んでまた惚れ直しました :)

 

余談ですが、じゃあ私が筋肉質の女性が好きかどうかというと、、、それはまた別の話です。。

 

フーリエ、今後も追っかけて行くかと言うと価格的にちょっと厳しいですね。それはどのブルゴーニュもそうですけど。あるものを飲んで余生を過ごそうと思います。

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mare

 

 

2019年の締めくくりとして、今年のワインTOP5 - ランキング 5 / The most memorable TOP 5 wines in 2019 - Ranking 5

お久しぶりでございます。来年早々に開店予定のワインダイニングの準備で時間が取れずかなり開いてしまいましたが、このタイミングでブログを書かせて頂きたいと思います。

 

今年も暮れが近づいてきましたので、昨年も掲載させて頂いた独断と偏見に満ちた2019年心に残ったワイントップ5。まずはナンバー5から。

 

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南アフリカ! ワインじゃないし、国だし(笑)でも、ラグビーワールドカップも優勝したし、このくくりでご勘弁を!

 

本当に南アフリカワインの最近の進歩は凄いと感じます。行ってみて良く解りました。去年の北海道訪問と同じでした。進歩の裏には素晴らしいコミュニティーがありました。生産者が技術・情報を共有しながら切磋琢磨しているんです。力の源はやっぱり「人」です。

 

サイオンズ・オブ・シナイ。今年の夏にこの南アフリカのワイナリーに訪問させて頂きました。当初、面識のあったアルヘイト・ヴィンヤードのクリス・アルヘイトのところに行かせてもらおうと思っていたのですが、母校ステレンボシュ大学醸造科の同窓会があるということでお留守。なので彼が訪問先として紹介してくれたのがこのワイナリー。本当に小さな場所で醸造しているのですが、生産者のベルナールは優しく、そして静かな情熱を持った人でした。彼が作るシラーが特に私のお気に入りで、彼がローヌのジャメという生産者のところで研修をしていたことがあるせいか、ジャメのコート・ロティを思わせる要素も。とはいうものの、ジャメのコート・ロティが黒系の果実味を持つならば、この生産者のシラーはナチュールらしい赤系主体にほんのりスパイスが漂う雰囲気。こういうワインを探していました!!初年度の2017年を30本、2018年は60本も確保してしまいました(呆)今後が楽しみです。ちなみに、私が訪問して数週間後、南アフリカワイン評論家の重鎮ティム・アトキンスの年次レポートでこの生産者を"The young winemaker of the year"に指名しました。なるほど納得の結果です!

 

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そして、春に来日していたホーガン・ワインズ。その時に知り合いになったご縁で南アフリカ訪問中にご自宅に招いて頂きました。

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そこで飲ませて頂いた中でも特にカベルネ・フランはお気に入り。カベルネ・フランの特徴である「青さ」はあるものの、赤/黒の果実味がバランス良く、かつ洗練されたシルキーなタンニン。クロ・ルジャールもそうですが、カベルネ・フランのキーポイントはタンニンのシルキーさだと思っています。また、注目のフランが増えました。

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最後に変な話をしますが、「売れるワイン」と「美味しいワイン」が必ずしも一致しないのが世の中なんだなと最近ちょっと思う節があります。もしかしたら、南アフリカワインは「売れるワイン」ではないかもしれません。でも私は「美味しいワイン」を飲み続けて行きます。

 

mare

 

 

 

日本の豊かさと自然派ワイン

ボツワナ南アフリカを旅して本当に色々な事を学ばせてもらいました。その学びを共有するために自分の職業であるワインと経済から一つだけ書きます。

 

結論から言うと、日本は本当に本当に豊かだと言う事。

 

普通に水が飲め、治安も良く、公共のトイレでもウォシュレットがあり、、、、、高級レストランに行かなくてもワインが最高の状態で飲める。

 

個人的に見ると南アフリカにはワインに2つの領域があります。今回私が訪問したワイナリーは先進的、意欲的、向上的であり、口を揃えて話すのはエレガンスとミニマムな酸化防止剤投与。でも南アフリカの現状を見ると、よく飲まれているものは温度も含めて乱暴な扱いを前提にした相当量の酸化防止剤を含む低価格ワイン。私が訪問したワイナリーのワインは価格面だけでなく、取り扱いも含め難しいのか、国内で消費されることは多くなく、海外向けに輸出されていくようです。

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未だに貧富の差が激しく、治安も改善しているとはいえ良いとはいえず(どこの大型ホテルや観光に力を入れているワイナリーも入り口には堅牢な門がありセキュリティーの人が24時間駐在して入場者を確認している)、政治も不安で国債引き下げ圧力にさらされ、そのような状況の中では取り扱いに多大なケアーとコストのかかる自然派ワインなどは活躍する機会など本当に限られるのだなという現実を思い知らされました。テスタロンガなんて、どこのレストランやビストロでも(専門店は除き)見ることはありませんでした。

 

つまり、ワインの世界から極端な話をすれば、その辺のビストロでも気軽に自然派ワインが飲めることは、日本の豊かさの象徴のように思えます。それが本当にすごく贅沢で幸せなことだということを今回の旅で実感させられました。

 

最後に懸念事ですが、日本の豊かさは途方もない額の「借金」で賄われていることを忘れないでいたいです。街金でお金を借りれている内は、どんな人でも贅沢な暮らしはできます。でも、そんな生活にはいきなり破綻がきます。輪転機を回すことができるとは言え、国も最終的には同じです。財政赤字年金問題に目をつぶり、ぬるま湯生活を続けていれば、最終的には自然派ワインが飲めない時代が来てしまうかもしれません。立て直すためのカードはもう本当にあまり残ってないと思います。現実から目をそむけないでいたいです。

 

mare

ワイン 個性 楽しみ方

今日、インスタグラムのDMで「まれさんは珍しい人ですね。高級ワインもナチュールも何の隔てもなく飲んでしまう。」というコメントを頂きました。はい、私にとって最高の褒め言葉です。本当にありがとうございます。

 

そうなんです。何度も言いますが、高級ワインだ、ウマ安ワインだ、ナチュールワインだ、クラッシックだ、ニューワールドだ、そんな小さな枠に収まりたくないんです。真面目に造られたワインか?いい加減に利益目的だけで造られたワインか?好きなワインか?好きじゃないワインか?そんな枠ぐらいでいいんじゃないですか?「縛られるのは」?

 

ワインになるとなんでそんなに小難しくなるんでしょう?たぶん、多くの人がワインを未だ遠い存在にしているからだと思っています。実はカジュアルさを前に出すナチュールも含めて。そう思う理由はこんなところです。

 

お肉。。。。ワインと同じように、安いものも、高級品も、輸入牛も、ブランド牛も、飼料をオーガニックにこだわったものも、工業的に育てられたものもあります。お肉を食べる時、「私は神戸牛の5Aランクしか食べないの。」っていう人がどれくらいいるでしょう?グルメでかつお金持ちの人でも、仙台牛、佐賀牛、伊賀牛、神戸牛、松坂牛、宮崎牛、熊本のあかうし、などなど、個性を味わって食べますよね。お金持ちの人でも5Aばかりじゃなくて、3A だって2Aだって食べますよね。お肉に対しては、それぞれの「個性」を認めて、シチュエーションに従って食べ分けたりする程、近い存在として付き合っているんですね。そう考えると、ワインは市民権を得てきたとはいえ、まだまだ遠い存在にされているように思われます。

 

今日、うちに届いたパーチナのパクナ。美味しい、美味しくないは置いておいて、とても個性的なワインですし、記念碑的なワインです。すごい糖度のブドウから最終的にはアルコール16.5度を超えるワインができてしまいました。うちのチビの生まれ年なのでそんな「個性」をワインセラーの中に入れて置きたいと思って購入しました。

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こんな濃いワイン、そんなにありませんよ。確かに、個人的には「綺麗」なワインが最近は好きなので、この手のワインが毎日食卓にのぼることはありません。でもたまに飲んでみたくなりませんか?フィレステーキが楽な歳になっても、たまにはサーロインステーキやリブロースが食べたくなるのと一緒です。

 

生きていたら色んなシチュエーションがあります。だから、ワインもその時々でいろんな個性を楽しみましょうよ。難しいことを考えないで。変に「縛られないで」!

 

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