mareのおすすめワイン

インスタグラム mare.wine が綴るワインと時々経済のはなし

アンリ・ジャイエの功罪

インスタグラムに「アンリ・ジャイエ負の遺産」と書いたら質問がきたのでそれについてちょっと。

 

アンリ・ジャイエは何をもたらしたか?

 

全て個人的見解ですのでご容赦下さい。

 

アンリ・ジャイエが創造したものは素晴らしいワイン達とワインの「価格の自由化」。アンリ・ジャイエが他界する以前はワインの価格にはそれなりの秩序というものがありました。それが良い悪いは別として、DRCのワインを超える価格のワインはブルゴーニュにはほぼなく、ボルドーでもペトリュスやル・パンを除けば4大シャトーを超える価格のワインはほとんど存在しませんでした。

 

アンリ・ジャイエの他界後、もともと神様と言われていたが故、そしてワインが素晴らしかったが故に彼のワインは青天井に上がっていきます。私がアンリジャイエを買って飲んでいた時代、DRCのエシェゾーが4万円、5万円、アンリ・ジャイエのエシェゾーは2万円といった感じでした。それが他界した途端、20万円、30万円になり、今だに上がっている状況。「上がるもの」を見れば、投機家はついてくるのがこの世の中。ちょっと前の仮想通貨もそうでした。実体がなくても上がれば人はついてくる。それが世の中の悲しく虚しい性です。

 

私がいた金融業界の人間にもワインのことをあまり知らないのに投資したりする人間も増えていきましたし、巷でもワインファンドとか言われるものも散見されるようになりました。ワインを飲まない人もワインを語り出す変な世の中になってきて、話のネタはパーカーがリリースしたレポートにはXXが100点をとったらしいとかなんとか。

 

逆にアンリ・ジャイエは一部の造り手に夢を与えることがあったかも知れません。消費者サイドに立つ多くの造り手はそうでないかも知れませんが、アメリカン・ドリームを夢見る生産者には道が拓けました。一旦世の中で評価されれば、3千円でなく3万円でも買ってもらえる世の中になったわけですから。

 

ところでワインはまだ上がっていくのでしょうか?元株式トレーダーの私にもそんなことは分かりません。一つ言えることは、バブルであることは間違いありません。そして、ワインを飲まない人がワインを持っている事実は何を意味するのか?つまり、昔よりもワインの価格が如実に経済とリンクするということです。経済が悪くなれば、それらは持ち主から離れていくからです。供給が増えれば価格は下がる。今の循環が逆転するんですね。

 

バブルは爆けてみないとバブルとは分かりません。それがバブルの怖さです。山が高いと反動も大きいので、そろそろ今の流れが止まって欲しい今日この頃。

 

早くワインがワイン愛好家の元へリーズナブルな値段で戻って来ることを祈ります。

 

mare