mareのおすすめワイン

インスタグラム mare.wine が綴るワインと時々経済のはなし

キレイごとだけでは生きていけないけれど……

案の定、プリューレ・ロックは市場から消えた。

 

ワインの市場はもう株式市場と変わらない。株式市場ではテキスト・リーディングというテクニックがあって膨大な数のサーバーを保有するヘッジファンドなどが毎秒(正確に言うと毎マイクロセカンド:1/1000000秒)伝達されるニュースを読みこんでは、市場に影響を与える「ネタ」を探している。このテキストリーディングはSNSも当然読み込んでいて、ツイッターフェイスブックなどに書かれていることや、それに対するリアクションなどもチェックしている。その上、AIが過去のデータと照らし合わせながら、情報の正確性や影響度なども判断している。ワインの市場はそれからすると情報伝達はまだまだ遅いけれども、でも数日後に楽天を見てみるとロックのワインはほとんどが無くなっていた。それどころか、ネットショップ、ネットオークションやフリマなどで相当な高価で販売しようとしている人たちまでいる有様だった。

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株式市場の格言に、「人の不利は自分の利」という言葉がある。私の生きてきた株式トレーダーの世界、証券会社のプロトレーダーでも生きていける人はだいたい全体の2割程度。あとは首になって退場していく。そんな中では「自分の利」を優先させなければ生きていけない。それでも、やはり「人の不利」はともかく、「人の不幸」に便乗してはいけないと思う。25年間トレーダーをしてきたが、一つだけ自分を誇りに思っていることがある。「人の不幸」に便乗しなかったこと。神戸の震災の時も、東日本大震災の時も、熊本や北海道の震災の時も決して関連銘柄を買わなかった。一般的に、保険株を売り、復興関連株と言われる建設株、建設機械株、コンクリート株などを買っていけば儲かることが多い。でもそれで儲かっても心は貧しくなる。仕事への情熱も薄れる。そして何より被災者の方々へ顔向けができない。

 

ワインの世界、仕方なしにも株式市場の様に情報戦の世界に陥ってしまった。時代の流れなのだろう。でもそんな中で、各々が目先の利益ではなく、長ーい「信頼」という利益を考えていく必要があるのではなかろうか。 mareには未だにかなり安価な値段でアンリ・ジャイエを売ってくれるお店がある(今はたまーに)。生前アンリ・ジャイエととても仲の良かった人がいる店なので、当然本物。そのお店の人はワインを本当に好きな方に飲んでもらいたいと言って、私に売ってくれている。私も、当然そのお店とは長いお付き合いをさせて頂いている。そんなmareにも汚点はある。以前書いたようにマルセル・ラピエールの死後、相当量、彼のワインを購入した。もちろん、儲けようというつもりは全くなかった。でも、行動としては何も変わらない。自戒も含めて今回プリューレ・ロックは1本も買わなかった。

 

この10月に訪れた北海道で出会った生産者の人たち。毎日大変な仕事をされているのだと思うのだが、そんなことを見せる様子もなく、とても生き生きといい顔をしておられた。自分もいい顔をしてワインに携わっていきたいと思う。キレイごとだけでは生きていけないけれど、キレイごとで生きていける力をつけて進んでいきたい。

 

mare