インフレーション デフレーション 技術革新 そして ワイン
少し前の投稿でワインが投資に向いていませんよ、という記事を書きました。それを訂正するつもりは毛頭ないのですが、しかしながら今の時勢を客観的に観察することもまた大事。これまでワインが高騰してきた事実を考えてみましょう。
ワインは嗜好品だからとか、中国のお金持ちが買っているからだとか、世の中の風評は色々あります。どれも間違っているということではないのですが、それについてあまりに短絡的な記事が多いのも事実です。25年「価格の番人」として株のトレーダーをしてきた人間の目から見ていくつかの要素をまとめてみたいと思います。
そんなに難しいことは書かないからご心配なく!
物の価格が上がるということは一般に経済では「インフレーション」と呼びます。その逆が「デフレーション」。ざーっくりいうと、世界的には「インフレーション」。ものの価格が上がり続けています。それでは日本は?
日本はそのどちらでもない、もしくはちょいインフレ。なんで? 1. 人口減ってます、 2. 「歳とった時に年金なんてないでしょ、貯金しなきゃ」マインド、 3. 日本のお金、ほとんどおじいちゃん、おばあちゃんが持ってます。そりゃー、お金使わないわ! お金使わないから物の価値上がらないわ! そして、生産の効率性および技術革新。トヨタの車、今も20年前もそんなに値段変わってなくないですか? カーナビついて、安全装置ついて、制御装置もついてなかなか車酔いしなくなるぐらいすごい車になっても値段は変わらず。テレビなんて1年したら半額。そしてもう一つの大きな要素。インターネット!同じ製品で一番安い店をいとも容易く探せる世の中。最近、日本銀行がその影響の大きさに気づいたようですが、100年遅い感じ?! どちらにせよ、日本国内では価格が上がらない要素のオンパレード。
そんな中でなんでワイン上がってるの?
やはり、世界のインフレ環境が大きく影響しています。過去の長く続いた世界的金融緩和環境が作り出したお金の「ダイリューション」(価値の希薄化という意味です)、加えてアジアを中心とした高所得層の増大。黙っていてもワインの価格は上がっていく状況が世界的にはあり、日本はさらに異次元の金融緩和を続けて「日本円」を「ダイリューション」させているので、円が下がる結果、海外のワインの価格に上昇圧力がかかってしまってます。
未だ金融緩和でお金がじゃぶじゃぶしている状態。評価の高いワインがあるとなかなか買うことを諦めない。それを見越してネットで買ってヤフオクで売る投機筋。もっとそれを大掛かりにやっているアジアマネー。
じゃあ上がり続けるじゃん? いやいや。 本当に生産量の少ない自然派ワインとかは置いておいて、ボルドーワインなんて何万本、何十万本とどこかのセラーに寝ていると思いますよ。そして、そのワインはそのうち世の中に出てきますから。今は諦めて、その時に買えばいいんです。(ただワインの状態だけが心配。)
じゃあ、世の中がもっと本格的なインフレになったとしたら?
本格的なインフレになったとして、キャベツが1000円になったときにワイン買っている余裕がありますか?日本の高度成長期もそうでしたが、賃金の上昇は消費者物価に遅行します。給料増えないのに、生活費だけはどんどん上昇していく。ワインへの購買力が落ちれば価格を修正しようとする力が働きます。今後もワインだけ値段がどんどん上がっていくという「イリュージョン」は存在しません。
mare